ドラァグの歴史が学べるミュージカル『The View Upstairs 君が見た、あの日』
どうもビリーです。本日は番組ではなくミュージカルの話です。
(※作品のネタバレを含みます。)
わたくし、ネトフリ漬けの限界OLですが、実は余裕がある時はオペラグラスを持って観劇に通う舞台勢もやらせてもらっています。
本日は日本青年館でミュージカル『The View Upstairs 君が見た、あの日』を観てきました!
作品紹介
まずはざっと概要をご紹介していきます。
↓作品紹介(引用)
ニューオーリンズに実在した「アップステアーズ・ラウンジ」という同性愛者クラブで1973年に実際に起きた米国史上に残る同性愛者に対する事件の一つ”アップステアーズ・ラウンジ放火事件”を題材に、ブロードウェイ新進気鋭の若手作家、マックス・ヴァーノンが作・作詞・作曲を手がけたミュージカル「The View Upstairs」。
2017年にアメリカ、オフブロードウェイで初演、その後全米各地で上演。2018年にはオーストラリア、シドニーで初海外プロダクションが開幕、2019年にはロンドン版も上演され、そしてついに2022年日本初上演を迎えます!!
https://theviewupstairs.jp/introduction.html
↓あらすじ(引用)
現代を生きる若きファッションデザイナー:ウェス(平間壮一)は、ニューオーリンズのフレンチクォーターにある廃墟と化した建物を購入する。クスリでハイになった彼が窓にかかるボロボロのカーテンを引き剥がすと、その瞬間、 活気に満ちた70年代のゲイバー「アップステアーズ・ラウンジ」にタイムスリップしてしまう。
そこは、まだ同性愛が罪であった時代に強い絆で結ばれた”はみ出し者” たちの拠り所であった。様々な事情を抱えた彼等と触れ合い、時に厳しい70年代の現実を体感する中で、人と人の絆の意味を学んでいくウェス。
パトリック(小関裕太)という青年との間にも、ささやかな恋が芽生えていく。だが、やがて「アップステアーズ」の秘密が明かされる「その時」が訪れるのだった…。
https://theviewupstairs.jp/introduction.html
おすすめポインツ
お分かりのように、実際に起きた“アップステアーズ放火事件“をベースに描かれた話題作です。
私は主演の小関裕太さんが好きなので先行抽選でチケットを取っていて、小関くんのスタイリングも演技もお歌も本当に最高なのですが、それはまた別のお話ーー
そうでなくても、ドラァグレースが好きな方・興味のある方にとって、
①クィアコミュニティの歴史を学び、現代について考えされられる
②クラブでなく舞台でドラァグショーが観れる
というところでおススメしたい作品です!
ル・ポールの発言
もちろん「ル・ポールのドラァグレース」は、アメリカのゲイやドラァグの歴史を知らなくても十分に楽しめる番組ですが、ル・ポール自身は社会的なクイーンの立場を第一線で確立してきた超本人。
この作品が扱う事件が起きた4年前に起きた“ストーンウォール事件“など、人権や表現の自由を手にするために先人たちが戦ってきた歴史があることを、審査コメントなどでも口にする場面も少なくありません。
この作品を観れば、ドラァグレースの様な番組が多くの人に愛され、ドラァグが芸術として広く認められている現代に至るまで、歴史的には色々なことがあったことがわかり、楽しみ方も増えるかもしれません。
クィアコミュニティの歴史を学ぶ
作品では、当時LGBTQ+の登場人物たちが社会的にどれほど肩身の狭い想いをしていたのか、物語を通じてその断片が垣間見えます。
「心おきなく神に祈れる場所が欲しい」と集う舞台となったバー「アップステアーズ」ですが、ひとたび警察官が来れば空気は凍てつき、営業停止や逮捕という事態にならぬよう賄賂を渡すしかありません。
そうした中で心から話せる仲間がいる、人生の相談ができる、商売ができる場は非常に重要ということが印象的に描かれます。
中でも小関裕太さん演じるパトリックは、実の家族からは勘当されている若者で、彼にとってもアップステアーズは心の家。助けの手を差し伸べてくれる人々は、もはや仲間ではなく、”chosen family”でした。
Chosen Famiy
作品の中でchosen familyという単語は出てきませんが、実の親子と遜色なく絆を築く他人同士が美しく描かれています。
後半でもう一度歌われるオープニングナンバーでは、アップステアーズがみんなにとって楽園のような場所であることが繰り返し歌われます。
ドラァグレースでも、出場者のクイーンたちはル・ポールのことを「ママ・ルー」と呼び、人生の導きをあおぎます。
ドラァグ界では、「ドラァグ・ファミリー」という概念があり、「ドラァグ・マザー」と呼ばれるベテランのクイーンの「ドラァグ・ドーター」になって、ショーのいろはを学んだり、一緒にショーを開いたりします。
仕事上の利益だけでなく、私生活において家族同然に支え合う新たなコミュニティを自分で選び取っていくことができるーーその大切さを感じ取ることができるミュージカルだったと思います。
青年館が二丁目に!!!
阪本奨悟 新章突入
まさかドラァグショーじゃないのに阪本奨悟くんのパフォーマンスが1曲観れちゃいます!
阪本奨悟くんといえば、2.5次元界隈では知らぬ人はいないでしょう…ミュージカル「刀剣乱舞」堀川国広役などでおなじみ、美人で華奢でお歌の上手い人気俳優さんです。
彼の演じるフレディは、アップステアーズなどの場でオーロラというクイーンたちとして活躍するパフォーマーでした。
母親とともにプエルトリコから出てきた彼の物語での役割、セリフなども見応えがありますが、生歌ドラァグショーのクオリティがやばすぎる!
南部らしく?、敬虔な白襟黒ワンピからスタート。
オレンジのミディアムパーマのウィッグは、なんとなくアリッサ・エドワーズ風。
アップビートなナンバーで序盤から歌唱力爆裂するなか、早速のReveal(一つの衣装を脱いで二つ目のコーデを披露するドラァグステージの常套手段)で中に着ているドレスをお披露目!
お決まりも抑えて完全にしょーじゃないですか〜!
注目のパフォーマンスは…?
そして一場面前で警官に仕事道具を全部取り上げられたフレディを救ったのは、デザイナーである主人公のウェスが即席で作ったカーテンのドレス…
とても構造的で目を惹く素晴らしい出来でしたが、カーテンと聞いて思い出すものは…?
そう、ドラァグレースのメインチャレンジでも登場するカーテンテーマです!
オーロラのダンスは、主人公ウェスに「君のパフォーマンスは反政府的でくだらなくて政治的で最高」(記憶…)と言われていました。
ミュージカルの中で“実際に曲としてパフォーマンスされている曲“が挟まると全力で観客できて最高に楽しいよね〜〜!
坂本くん、ドレスもメイクもダンスも超良くて、すごく研究したんだろうなあという感じ。あっぱれです。
それから、美肌色白の俳優さんですが、その自信満々なオーラは“プエルトリコ出身クイーン“という背景も納得でした。
プエルトリコクイーン
ちなみに番組で大活躍したプエルトリコクイーンたちをちらりご紹介…!
他にもたくさんいらっしゃいます〜
今日に寄せて
こんな感じで学べて楽しめる作品でしたが、タイムスリップものになっていることによって、
<昔より今は色々マシ>
ということがよくよく分かると同時に、
<今もまだまだ理想には遠すぎる>
ということもズシンと響く面もありました。
特に現代に戻った後、最近起きたLGBTQ+に対する悲しい事件を羅列するところはかなり辛くて、さっきまで「昔は大変だったね」という方向だったマインドが、一気に「今の世の中は正しいのか」「より良くするためにできることはないのか」という気持ちになりました。
そういう意味でも、今の時代にできた作品として、回顧や記録だけでない問いかけがあって、評価される理由にもなっているのかなと。
おわり
かなり長めの感想になってしまいましたが、まだチケットがあればぜひおすすめです!
前にブリリアホールで見たミュージカル『ジェイミー』もドラァグに関連する良い作品だったので、いつかその話もしてみたいですね…
以上ビリーでした〜〜あたたかくして寝てくださいね〜〜!